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Well-beingデザイナー

「3つのP」を知って心を軽くする考え方を身に付けよう

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「Well-beingデザイナー」では働く人のWell-beingを実現していくためにココロとカラダを心地よくする情報を、保健学博士の島田恭子先生にGlad Street編集長の長内のりこが伺っていきます。わたしたちとともにWell-beingなライフスタイルをデザインしていきましょう。今回は、私たち人間の持っているネガティブ思考「3つのP」をご紹介します。

ネガティブ思考を紐解く「3つのP」

職場でもプライベートでもストレスが多い現代社会。自分ではどうにもできないことが多いストレスを軽減できる方法があるんです。それは考え方のくせを知り、微調整すること。

セリグマン博士がおこなった、学習性無力感の研究から着想を得て提唱されている「3つのP」というものがあります。これは、私たちが抱くネガティブ思考を3つに分解した頭文字です。

  • 個人化(Personalization)
    「どうせ私なんか」のように、必要以上に自分のせいにしてしまうこと。例えば、クライアントとの約束が急になくなったとします。ある人は「何か急な予定でも入ったのだろう」と考えます。ところが個人化しやすい人は「きっと、私なんかに時間を割きたくないのかも」と思ってしまう、といった場合です。
  • 普遍化(Pervasiveness)
    「一事が万事」という言葉があります。一度起きた自分にとってよくないことを、他の事にも広げ、普遍的に捉えてしまうことです。例えば、お付き合いしていた女性とうまくいかずお別れした男性が、「自分は魅力がないんだ。きっとほかの女性とだって、うまくいくはずないんだ。なんなら仕事だってうまくいかないかもしれない…」などと、他のこともマイナス方向にとらえてしまうことです。
  • 永続化(Permanence)
    一度起きたネガティブな出来事が、ずっと続いてしまう、と考えることを指します。例えば、なにか仕事で失敗した際、「自分はいつまで経っても仕事ができないダメな人間なんだ。きっとこれから努力したって永遠にできるようにはならない。」といった感じです。

やってしまいがちな考え方

今、説明した3つのPは、私たちのこころを重くする考え方です。ということは、この3つそれぞれを、反対のベクトルに向けると、こころが軽くなるということ。

個人化は非個人化へ:「必ずしも自分のせいじゃない」
普遍化は特定化へ:「今回は不運にもそうだったけど他にだいじょうぶなことはある」
永続化は一時的へ:「今は耐え時。前を向いていればいつか笑える日が来る」

まずは日ごろから、仕事や生活の中で、こころが軽くなる考え方を意識しておくのがおすすめです。私たちは1日に何万回と思考しますから、まずは意識化できると練習のチャンスはたくさん!すこしずつ心が軽くなる考え方を実践できますよ。

他にも遺伝子的にも文化的にも生真面目である日本人がしがちな考え方はこんな感じ。

  • 自分への関連づけ:自分に関係のないことまで自分の個人的責任だと判断してしまう
  • 根拠のない推論:具体的な根拠がないまま結論を急ぎ、否定的に推測する
  • 完璧主義:デジタル思考、白黒思考。白黒、〇か×かをはっきりさせないと気が済まない
  • 選択的な注目:自分に関係のある特定の部分だけが気になり、抽象的に結論づけること
  • 過大評価&過小評価:欠点を実際より過大に評価する一方で、長所は逆に過小評価する
  • 感情による判断:客観的事実よりも、自分の感情から状況を判断する

誰しもよくやってしまいがちな考え方ですよね…。「最近、なんか疲れていてネガティブ思考寄りだなぁ」と感じる方がいらしたら、ぜひともご参考になさってください。

ブルーなきもちを無理に変えようとしなくて大丈夫

”考え方”がなぜこころを軽くするのに重要なのかというと、“考え方”は私たちの「気分」に直結しているからです。私たちは毎日、たくさんの出来事に遭遇しますよね。そのたびに、

出来事 ⇒ 考え ⇒ 気分 ⇒ 行動

という流れを繰り返しています。

たとえばこんなAさんがいるとします。

・(出来事)上司に「最近、仕事がんばってるねーー」と言われた ⇒ 
・(考え)「さらなる作業が振ってくるのではないか?」 ⇒
・(気分)「不安、猜疑心」 
・(行動)⇒「がんばってる風は見せない。上司と目を合わせない」

といったかんじです。いいか悪いかは別として、ある出来事が、自分の考えを通して、気分や行動につながっていく経路がおわかりいただけると思います。

この中で、起こる「出来事」や湧き出る「気分」は変えづらいけど、「考え」や「行動」を変えることは比較的カンタンなんです。

それでは例えば先ほどの例、同じ出来事に遭遇したBさんはどうでしょう。

・(出来事)上司に「最近、仕事がんばってるねーー」と言われた ⇒ 
・(考え)「上司にねぎらってもらえた。期待してもらえている」 ⇒
・(気分) 「嬉しい」 
・(行動)⇒「今日は家族にケーキでも買って帰ろう」

同じ出来事でも、AさんとBさんの考えの違いによって、気分や行動がまるっきり変わってきますね。

そもそも人間は思考の8割がネガティブ、とも言われています。だから皆、多かれ少なかれAさんのような考え方をしてしまいがちです。ネガティブ思考がだめ、というわけではありません。ただそれが続くと、自分にとって苦しい状態が続きます。いつもこころが重くなる考え方をしているうちにそれがくせになってしまい、その考え方が気分や行動に影響するからです。さらに言えば、こころと体は繋がっていて、ブルーなきもちによって、お腹が痛くなったり、眠れなくなったりすることがあります。  だから最近、「ブルーになりがちでちょっと苦しいな」と思われる方。ぜひ、今回の「心を軽くする考え方」をご参考に、まずは3つのPでアプローチしてみてくださいね。


島田 恭子

保健学博士。企業での人材育成の経験から、心の健康の重要性を感じ、東京大学大学院医学系研究科にて予防医学・メンタルへルスを研究。 医学や心理学の知見を、職場や生活に応用する支援を行う一般社団法人ココロバランス研究所を設立し、研究所長を務める。

ココロバランス研究所