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Well-beingデザイナー

イキイキ働く人を増やす「ワーク・エンゲイジメント」とは?

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「Well-beingデザイナー」の目的は、働く人のWell-beingを実現していくこと。ココロとカラダを心地よくする情報を、保健学博士の島田恭子先生に、Glad Street編集長の長内のりこが伺っていきます。わたしたちとともにWell-beingなライフスタイルをデザインしていきましょう。今回のテーマは、働く人のWell-beingに欠かせない「ワーク・エンゲイジメント」についてです。

仕事に対する3つの考え方「JOB」、「CAREER」、そして「CALLING」

「ワーク・エンゲイジメント」とは“仕事に積極的に向かい、活力を得ている状態”を意味します。イメージとしては、Well-beingは従業員一人ひとりの人生が主語であるのに対し、ワーク・エンゲイジメントは、組織から見た一人ひとりのWell-beingを上げていくための考え方、といった感じです。

「仕事」は働く目的によって3つの考え方に分けられます。主にお金のために働くのが「JOB(ジョブ)」、自己成長のために働き、仕事によってさらなる成長や高みを目指すのが「CAREER(キャリア)」、たとえお金や名声が得られなくとも、ただただその仕事がしたい、という使命感で働いているのが「CALLING(コーリング)」です。コーリングは日本語で「天職」とも訳されますね。

イキイキ働く=“ワーク・エンゲイジメント”の観点からいうと、「JOB」より「CAREER」、「CAREER」より「CALLING」のほうが、働きがいを感じやすく、Well-beingが高い傾向にあります。働くことを、「CAREER」でとらえられると、よりイキイキと仕事ができ、良いスパイラルが生まれるんですよね。

ワーク・エンゲイジメントの4つの分類

「Well-being」は生活または人生の中で、ある指標に沿って、一人一人の幸福度が高いか低いかを測ることができます。「ワーク・エンゲイジメント」は働く、ということを切り口にした時に、仕事にどれだけ熱意を持って没頭し、活力を感じているか、ということになります。

例えば、趣味のギターが生きがいで、仕事は「JOB」としてこなしている人がいるとします。Well-beingの観点だと幸福度が高いのですが、ワーク・エンゲイジメントとして見た時に、その数値は必ずしも高いというわけではありません。

Well-beingの指標もワーク・エンゲイジメントもどちらも大切です。

ワーク エンゲイジメント
出典:『新版 ワーク・エンゲイジメント』2022.島津明人著)労働調査会を島田改変

ワーク・エンゲイジメントの指標では、働く人の状態を大きく4つに分類することができます。横軸は仕事に対して快・不快か、縦軸は活動水準が高いか・低いかです。

  • ワーク・エンゲイジメント:仕事にやりがいを感じてイキイキと楽しそうに働いている状態
  • ワーカホリズム:仕事に追われ、強迫的に働いている状態
  • 燃え尽き症候群(バーンアウト):ワーカホリズムが続いた結果、燃え尽きてしまった状態
  • リラックス:不快ではないが、仕事の活動水準が低い状態

Well-beingの観点で言うと、やはり働く上で最も望ましい状態と言えるのが「ワーク・エンゲイジメント」。ただ最初はワーク・エンゲイジメントな状態で働いていても、例えばあまりにも仕事量が多すぎ負荷がかかると、ワーカホリズムとなってしまいます。ワーカホリズムは活動水準が高いままです。
不快な状態でハードワークをこなすという状態は、長くは続きません。最後は不快な状態がストレスとなって燃え尽き症候群となっていくでしょう。

ワーク・エンゲイジメントを高めると生産性がアップ

ワーク・エンゲイジメントは3つの要素で成り立っています。

  • 活力がある
  • 仕事に熱心に取り組んでいる
  • 仕事に没頭している

ワーク・エンゲイジメントが高い従業員は、生産性が高く顧客満足度も高い傾向にあります。また、ワーク・エンゲイジメントを高める要因は大きく2つあります。その人自身の能力や周囲のサポートといった「個人が持つ資源」をあげることと、バックアップ体制やオフィス環境を整えるなどの「会社の資源」をあげることです。組織が従業員の生産性を考えるとき、ワーク・エンゲイジメントを意識することも一手ですね。

これまで組織の配慮義務として例えば、燃え尽き症候群からのうつ病等精神疾患への対応に、主な焦点があたっていました。もちろんそれらも大切ですが、最近では、組織の生産性や従業員のwell-beingの観点から、ワーク・エンゲイジメントを高めることが必要だという議論が出てきています。ワーク・エンゲイジメントには測定指標があるので、数値として見える形で、生産性アップに繋げていくことができるのも魅力ですね。

厚生労働省が発行している労働経済白書の2019年度版では、ワーク・エンゲイジメントが特集されていて、ワーク・エンゲイジメントが高い従業員は、会社への定着率や生産性、顧客満足度が高いというデータも示されています。また、ワーク・エンゲイジメントが高い会社で行われている人材育成の中身に関する調査も興味深いです。指導役や教育担当ができるリーダーの育成、成長の機会を与えていること、将来の見通しが明るいこと、などがあげられていて、なるほどこれらの要素が、働く方々の仕事に対するモチベーションやワーク・エンゲイジメントをあげていることがよくわかります。

ぜひご興味のある方はご覧になってみてください(労働経済白書 2019年度版 厚生労働省)。


島田 恭子

保健学博士。企業での人材育成の経験から、心の健康の重要性を感じ、東京大学大学院医学系研究科にて予防医学・メンタルへルスを研究。 医学や心理学の知見を、職場や生活に応用する支援を行う一般社団法人ココロバランス研究所を設立し、研究所長を務める。

ココロバランス研究所