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Industryアーティスト

リサイクル素材でサステナブルな社会を牽引する「三菱商事ファッション」

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企業名:三菱商事ファッション株式会社
住所:〒108-0023 東京都港区芝浦3丁目16−16 住友不動産田町ビル 東館
TEL:	03-6757-3000
URL:https://www.mcf.co.jp/

三菱商事グループのファッション関連会社である三菱商事ファッション株式会社。ファッション業界の変化に伴い、事業形態を柔軟に変化させる必要が出てきました。新たな動きとして、環境に配慮した素材の生地を使ったファッションブランドの運営をしています。リサイクル素材のファッションブランドが生まれた背景と実際に運営してみての現在、そして今後の展望についてEC事業部の茨城 聡さんにお話を伺いました。

リサイクル素材、受注生産で地球に優しい自社ブランドを展開

三菱商事ファッションは、国内外のSPA(製造小売業)・アパレル各社に対し、商品の企画・供給を行い、顧客に対して素材調達・生産・物流から経営支援に至るまでのトータルサービスを提供しています。近年では、顧客であるファッションブランド様においても、会社の規模拡大に伴い、自社で生産体制を整備されるなど、ものづくりを内製で進める先様も増えております。こういった背景から、新たな事業展開として、自社オリジナルブランドの運営を通じた小売事業への理解の深堀をテーマとして、ECで展開する「NAGIE(凪へ)」を2021年3月にスタートしました。NAGIEではリサイクル素材で作られた洋服を受注生産で提供。さらに、不要になった洋服を回収し、再資源化を行っています。

リサイクル率78.5%!どのように実現しているのか

アパレル業界において、二酸化炭素排出量が多い主なプロセスは原料の生成段階です。原料の生成、縫製、輸送、ユーザーの使用、洋服を洗濯する際の洗濯機の稼働、捨てる際の焼却等の所謂商品のライフ・サイクルの中で二酸化炭素が発生します。最も二酸化炭素排出量の多い原料の生成で約50%を占めていると言われています。

「NAGIE」ではペットボトルを再利用して生地に使用。ポリエステルという合成繊維はよく洋服に使われている生地ですが、原料は石油です。概算ですが、石油からポリエステルを作るよりも、石油で生成されたペットボトルを再資源化して製品を作る方が二酸化炭素の排出量を50~60%まで抑えることができると言われています(あるいは50~60%まで削減できます)。

受注生産によって、捨てなくてはならない製品在庫を極力減らすこともサステナブルな社会の実現には欠かせません。日本だけでも毎年約30億枚の洋服が市場に投下されていて、そのうち約15億枚しか消費者の手元には届いていないと言われています。つまり、残りの約15億枚は利用されることなく廃棄されているのです。

「これは現在のアパレル業界の構造上、然るべき結果となっています。すなわち、コスト面を考えると少量のロットで作ることが難しく、大量に作ることにコストメリットがあり、また、売れ残りのリスクよりも、売り逃しのリスクを取らない様に、在庫を確りと蓄えておく、という観点でも経済的な合理性もあります。この大量生産・大量廃棄の実態に一石を投じ、少しでも環境負荷を減らそうと考えた時に受注生産にして過剰在庫を減らすことにたどり着きました」と茨城さん。

現在、「NAGIE」で生産している洋服の78.5%にリサイクル素材を使用しています。洋服を構成するのは、生地の他にボタンやジッパー、糸などがあります。それらすべての重量を計算して、そこに使われているリサイクル素材の平均値を足して算出した値です。

「まだまだこの値は納得できるものではありません。今後もこのリサイクル率の値を大幅に上げていきたいですね。毎期、リサイクル率を高めていくことを重要な指標として設定しています。」(茨城さん)

生地やボタンはリサイクル素材を使いやすいですが、ジッパーはセカンドユースのものが市場にほとんどありません。もともと「NAGIE」はジッパーを多用して機能性を訴求した洋服を作っていましたが、最近ではジッパーをできるだけ減らして、できるだけシンプルなデザインに変更しています。

プロモーションはリアルにこだわって着実にファンが増加

「NAGIE」はEC展開ではあるものの、認知拡大のためにポップアップを開催しています。

「インターネット広告やSNSを使ったプロモーションも大切ですが、ブランドを感じてもらうリアルな場が重要だと思っています。直接、洋服を見て、触れて、スタッフと話していただくことがコアなファン作りに繋がるはずです」と茨城さんは話します。

ポップアップで試着することはできますが、受注生産になるので購入してその場で持って帰ることはできません。商品サンプルのタグに付いているQRコードを読み込んでオーダーをすると後日届くという流れになります。

「たまたまポップアップの前を通りかかって初めてNAGIEを知っていただくお客様には、ブランドコンセプトやリサイクル素材を使用していることや受注生産についても細かく説明させていただいています。もともとNAGIEを知っていて、試着したいというお客様は試したい洋服を決めていらっしゃる場合が多いので、すぐに試着のご案内ができるようにしています。」(茨城さん)

最近はポップアップも継続的に実施をしていますが、SNSで「NAGIE」を知る方も少しずつ増えてきているという実感があります。芸能人が着ている洋服というより、もう少し身近でいつもSNSでチェックしているインフルエンサーさんが着ている洋服が気になって購入している、という方も多いです。

コロナ禍で変化したファッションニーズを捉える

「NAGIE」の客層は20代後半から40代。大学生などの若い世代はブランドに関心を持ってくれて、ファッション系の学生からコラボレーション企画の提案があったりしますが、実際の購買層はファッションにある程度お金をかけられる本物志向の方が多くなっています。ヨガやランニングなどの運動をされる方や起業家の方が多いとのこと。ブランド創設当初はリサイクルされたペットボトルを使っていることに興味を持っていただくお客様が多かったのですが、最近はファッション性と利便性に注目が集まっているようです。

「最近、ウールのような重厚なジャケットを着ることが少なくなりましたよね。ポリエステルのシャカシャカした軽いジャケットをカバンに入れたり、デスクに忍ばせておいて、商談の前に羽織るという使い方をするビジネスマンが増えているんです。また、コロナ禍で運動と生活が密接になりました。例えば、自宅でテレワーク中の昼休みにYouTubeを見ながらエクササイズをして、午後からビデオ会議に出席するというような人、また、出勤した際も仕事帰りにジムに行くという人が増えているのではと思います。自粛生活を余儀なくされた中で、心身ともに健康であることが注目されて、運動をする人が増えたのではと考えています。NAGIEにはビジネスシーンでも使えるジャケットもあれば、運動に使えるパンツなどもあります。生活と運動を包含した洋服がそろっているので、ライフスタイルの一部としてNAGIEの洋服はマッチしていると思います」と茨城さん。

地球規模のテーマであるサステナビリティと向き合う

地球環境のため、サステナブルな社会のためという活動は、規模が大きく、できることが多いゆえに何がベストなのかを模索して時間を要してしまいます。

「サステナビリティと向き合う中で、何ができるのかという悩みは尽きません。あれこれと思案する中で、先ずは受注生産とリサイクル素材の使用に行き着きました。設立当初は店舗のような固定インフラをなるべく持たないようにした方がミニマルでコストも抑えられる、ということでEC展開をしています」と茨城さん。

ブランドとしてできること、会社としてできること

現在はペットボトルを再利用して洋服を作っていますが、ブランド創設当初は裁断くずのようなコットンを紡いで糸に使用したり、漁網を再利用したナイロンを使ったりしていました。いろいろ試してみた結果、一つの素材に絞った方が良いと考えてペットボトルのリサイクル素材を使用しているそうです。日本でペットボトルの回収率は90%超と高い数値なのに対して、再資源化があまり進んでおらず、サーマルリサイクルといって実質的には償却されているケースが多いのが実態。再生された繊維が使われている率は全世界的に見ても1-2%程度と言われています。この、ペットボトルを含めた再資源化の率を上げていくことが地球環境に良いと考え、「NAGIE」の製品についても、最終的にはリサイクル率100%を目指して製品作り、プロモーションを進めています。

サステナブルなファッションは地球環境への考え方から広げていく必要があるため、ブランド認知も売上もすぐに結果が見えるものではなく、地道な活動の上に成立します。

「現在は、コアなファンの方をどれだけ増やしていけるかがキーだと思っていますが、より大きなインパクトを出していくという意味でも。他社ブランド様や企業にNAGIEを通じて開発したオリジナルのリサイクル素材をB to B事業として提供し始めています。将来に備えてB to CでもB to Bでもサステナブルなファッションの礎を築いていきたいと思っています。」(茨城さん)


環境問題への関心を高めるとともにブランド認知の拡大を進める三菱商事ファッションの新ブランド「NAGIE」。将来、環境問題に目を向けなくてはいけなくなる状況を先取りしてリサイクル素材の活用を推進中です。おしゃれで環境に良いのが当たり前になるまでは地道な活動ですが、今のライフスタイルと合致しているため、幅広い世代の方から支持されています。これからリサイクル率を上げながらより機能性とファッション性に優れたアイテムが登場していくことにますます注目度が高まるでしょう。