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東京・神田限定の日本酒で地域の活性化に貢献する「神田豊島屋」

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企業名:有限会社神田豊島屋
住所 :千代田区内神田1-13-1
TEL:03-5283-1871
URL: https://www.toshimayabuilding.com/

創業400年以上になる酒屋「豊島屋」のグループ会社として立ち上がった「神田豊島屋」。神田限定の地酒やオリジナルのみりんを製造・販売しています。これらの商品に込められた意味や神田の地域活性化に対する想いについて取締役社長の木村倫太郎さんにお話を伺いました。

「神田豊島屋」の歴史を紐解く

豊島屋グループは現在3つの会社で成り立っています。1596年創業の「豊島屋本店」、酒造りを行う「豊島屋酒造」、そして今回ご紹介する「神田豊島屋」。神田豊島屋はもともと不動産業を担っており、豊島屋グループの中で唯一、酒の製造・販売は行っていませんでした。当時の社長(現会長)が神田豊島屋としても酒を販売したいと考え、2007年にオリジナルの日本酒ブランド「利他(りた)」が誕生。2016年から神田限定販売としています。

「2016年までは他のお酒と同様に全国で販売していましたが、お世話になっている地元を大事にしたいという想いから神田限定販売としました。地元・神田の人が旅行や出張に行く際に、手土産として持って行って自慢できるようなものになったらと思います。神田は居酒屋、カレー、ラーメンなど食べ物で有名ですが、お土産に持って行けるような名物が多くないんです。神田といえば利他となってくれると嬉しいですね。反対に地方から東京に来た方が神田に行けばうまい日本酒が飲めるというイメージが付けば神田の活性化にも繋がると考えています。」(木村さん) 

神田でしか味わえないこだわりが詰まった感動酒「利他」

利他は、神田駅周辺をより元気にできたらという想いで販路を絞って神田限定で販売されています。

利他が誕生した2007年で、当初は1種類のみでしたが、現在は「純米大吟醸 大利他」「純米大吟醸 利他」「特別純米 利他」「特別純米 利他 無濾過生原酒」の4種類あります。

お土産としての幅広いお客様に飲んでいただくことを想定しています。東京のお酒ということですっきりと口当たりが良く、洗練された味わいというのを意識しました。もともと豊島屋酒造が得意とする味だったので、それをブラッシュアップした形です。4種類ありますが、贈る相手の好みに合わせて選べるように違った味わいを持たせています」と木村さんは語ります。

また、利他シリーズ4種類のうち「特別純米 利他 無濾過生原酒」だけは神田の居酒屋だけに卸しています。つまり、神田の居酒屋に行かないと飲めないということです。この「特別純米 利他 無濾過生原酒」はあえて“ど真ん中ストレート”な味にしています。

「最近だと、日本酒は個性的なものがたくさん出てきています。お客さんの印象に残らないと次にまた飲んでもらえないので、香りが強いものや山廃など特徴的な味を出している傾向が強いと思うんです。反対に王道の味というのが少なくなっています。利他は神田でしか飲めないという印象付けができるので、味に特徴を出すというより、みなさんが飲みやすい“ど真ん中ストレート”の味に仕上げました。冷やで飲めば口あたりが良く、料理とも合うのでお酒が進むはずです。燗して飲むと旨味が伸びて食中酒としても使えます。汎用性があり、香りも強すぎず、旨味もしっかりあるというバランスの良い味わいです。」(木村さん)

その他の3種類は神田の酒屋でしか買えません。居酒屋も含めて神田をみんなで盛り上げていきたいという想いが込められています。

地域活性化の取り組みがSDGsにも繋がる

酒蔵にある酒樽は鏡開きなどに使用しますが、通常は空いたらすぐに処分です。もったいないので空いた酒樽を何かに使えないかと考え、天板を付けて机や椅子に再利用しています。

「酒樽ベンチと呼ばれているんですが、街づくりのイベント等で大活躍。大量のゴミを減らすことにもなるので、地球環境にも優しいですよね」と木村さん。

神田豊島屋で販売している麹のリキュール「Me」もSDGsに貢献しています。加熱殺菌をしない生酒は冷蔵で保管しなければいけません。「Me」は糖度が高く、アルコール度数も14%と高いので、火入れ作業が不要で流通に置いても常温でOKなので、使うエネルギーが少なくて済むというのは地球に優しいお酒といえます。

「豊島屋Rita-Shop」で豊島屋のお酒の魅力をアピール

神田豊島屋のオフィスの1Fにはおしゃれな雑貨屋を思わせるような落ち着いたデザインの「豊島屋Rita-Shop」があります。オープン当初はスペースが狭く、利他シリーズしか置いていませんでした。スペースを拡張して、豊島屋グループ全てのお酒が取り扱えるようにしました。試飲はもちろん、そのまま購入できる今のスタイルになったのが2018年。

店内は黒を基調としたシックな空間。これはあえて無機質な空間にすることでデザイン性のある利他のボトルが際立つようにしているのだとか。店内には昔、酒蔵で使っていた醸造器具が置いてあります。日本酒好きな方には置いてある器具の説明をすると興味を持っていただけることも多いそうです。

また、神田限定の日本酒を販売しているということで地元の観光協会発行のパンフレットに取り上げられたこともあります。そのパンフレットを海外の方が見て豊島屋Rita-Shopを訪れることもあるそう。

「土日は神田駅前であれば人がいますが、当店のように駅から離れると人があまりいません。休日も神田に来てほしいという想いで豊島屋Rita-Shopは土曜日に営業しています。2018年のオープン当時は土曜になると誰も来店がないのではと思う日もありました。でも、土曜日にショップを開け続けていることで、近隣の方が買いに来てくださったり、平日に来られない方が来店されたりと少しずつ認知が広がっていきました。コロナ前は平日よりも土曜の方が安定的な売上げが上がるようになりましたね」と木村さんは話します。

美容と健康を意識した麹のリキュール「Me」

もともと豊島屋酒造でみりんを作っていました。酒造メーカー側からするとみりんが飲めるものだというのは常識。しかし、一般的には調味料のイメージが強く、飲めるというと驚く人がほとんどです。木村さんが出張でフランスに行った時に気付きがあったそうです。

「フランスでは男女関係なく甘いお酒を飲むんですよ。そこで、みりんは日本よりもフランスの方が人気になるかもしれないと思いました。

その後、よくよく豊島屋の歴史を振り返ってみると、日本酒よりも先に白酒というものを江戸時代に販売しています。この白酒のベースはみりんです。それがヒット商品となって豊島屋の酒造りの歴史が始まります。日本酒よりもみりんの方が深い繋がりがあるわけです。ただ、豊島屋のみりんはもちろん飲めるのですが、味わいの設計をしているわけではありません。そこで、飲み物として原料と味にこだわって、みなさんに飲んでいただきたいものが完成しました。それが麹のリキュール『Me』です。」(木村さん)

「Me」は麹の甘酒と同等な成分が入っていると考えられます。麹甘酒はたんぱく質やビタミンB郡、必須アミノ酸などが豊富に含まれており、“飲む点滴”とも言われるくらい美容・健康への嬉しい効果が期待できます。酵素の含有量は生野菜と同じくらいだそうです。強い甘みがありながらGI値が低く、ビタミン類やポリフェノールも摂取できます。

「Me」の構想が始まったのが2017年。新型コロナウイルスの影響で発売を延期していましたが、2021年に発売となりました。飲食店の方に使っていただいて、お客様におすすめしていただくという形で広めたいと考えているため、メインターゲットはバーです。

「私の同級生にバーテンダーのコンペティションで優勝したバーテンダーがいます。その友人に相談して『Me』を使ったカクテルができないかという相談をしました。とてもおもしろいし、美味しいものができると言ってもらえたので、そこからバーを中心にも広げて行っています。「Me」を使ったカクテルは、他の世界トップクラスのバーテンダーの方々にも広がりつつあります、という木村さんの話を聞いて、「Me」が世界に発信されることで日本のみりんの魅力が世界的に有名になっていく期待がどんどん膨らんでいきます。


お酒のイメージが強い神田という街でしか買えないという思い切ったブランディングが功を奏して注目が集まっている「利他」。カクテルとのコラボレーションで認知を広げている「Me」。古き良きを守りながら日本酒とみりんがさまざまな新しい形で神田から広がっていくのは大注目です。他と同じことをしても意味がないので、自分たちにしかできないことを追求した結果、神田限定の日本酒が誕生したと木村さんは話してくださいました。神田豊島屋のお酒と神田という街の相乗効果で盛り上がっていくに違いありません。